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チベットを知る一冊

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        本と情報の海を小舟で航海 Book Boat 2003/07/15(火) No.320
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	再編集 2008/03/19

■ 「8歳で尼僧、9歳で逮捕……。」(49頁)
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『囚われのチベットの少女』
	フィリップ・ブルサール+ダニエル・ラン(著)
	今枝由郎(いまえだよしろう訳)
	トランスビュー 2000円+税
	2002年5月発行 226p 四六判(縦196×140)厚20mm 上製 380g
	ISBN 4-901510-06-1
	
	 「チベット」と聞いて、あなたは何を連想しますか? 世界の屋根・
	ヒマラヤがそびえるその地域、でしょうか? 広大な領土をもつ中華人
	民共和国にあり、その西方の地でしょうか?
	
	 本書付録の年表によると、西暦763年、<チベット軍、唐の都・長
	安を占領、数週間続く>とあります。その後、13世紀にはモンゴル帝
	国に侵略されるなど、栄枯盛衰がチベットにもあったことをうかがわせ
	ます。それでも、チベットは「独立国」の形を成していたようです。
	
	 第二次世界大戦が終わり、毛沢東が中華人民共和国を樹立してのち、
	チベットの歴史は大きな転換を余儀なくされます。本書の年表によると
	1950年、<中国、チベットを「中国の一部」と宣し、人民解放軍、
	東チベットに侵入する>。
	
	 1959年<ラサで民衆蜂起。ダライラマ、インドに亡命、チベット
	臨時政府樹立を宣言する>。ラサはチベットの「首都」です。今チベッ
	トは中国の自治州の一つとなって、中国政府の統治を受けています。
	
                                   ◇
	
	 本書は「ガワン・サンドル」の伝記です。ガワン・サンドルは197
	8年にラサで生まれました。チベットは、すでに中国の支配下にありま
	した。
	
	 チベットでは
	 ──仏教と国民性は密接に結びついていた。僧院は、たんなる儀式、
	自己放棄の場ではなく、哲学、法要、文化、芸術、医学、占星術を教え
	る学校として機能していた。共産主義による破壊を免れていれば、図書
	館には何千という書物があった。──(19頁)
	
	 チベットに侵入した中国の兵士や、その後の文化大革命の紅衛兵は、
	チベット仏教の文化財をことごとく破壊したのです。
	
	 チベット人は独立を望みました。ガワン・サンドルの父ナムゲル・タ
	シは、その革命(抵抗運動)戦士のひとりでした。父は1991年、中国
	の警察に逮捕され、99年釈放されましたが、2001年に病気で亡く
	なりました。
	
	 父は子どもたちに向かって、チベット人が受けた悲劇をよく聞かせ、
	そのあとにはいつもこう語ったという。
	
	 ──「子供たちよ、チベットが解放されるまで、絶えまなく闘わねば
	ならない。ダライラマはインドで、チベットとチベット人民の自由のた
	めに休みなく闘っておられる。私たちは全力で彼を支持しなくてはなら
	ない。いつか彼を目にする日が来るだろう。私は確信している」。
                                                              ──(32頁)
	
                                   ◇
	
	 ガワン・サンドルはわずか5歳で尼僧になりたい、と言った。それは
	あまりにも幼すぎたが、父や尼僧の姉、政治活動に参加する兄を眺めて
	少女はあまりにも早く「成熟」した。
	
	 ガワン・サンドルは、8歳で僧院に入った。
	
                                 ***
	
	 1990年、少女が11歳のとき、デモに参加し、「自由チベット万
	歳!」と叫んで逮捕され収監される。懲役一年。武器なし。暴力なし。
	
	 1992年。ラサでデモをして3年の懲役。武器なし。暴力なし。
	
	 1993年。監獄の中で、抵抗の歌を録音して、6年の追加刑。武器
	も暴力もなし。
	
	 1996年。看守に抵抗して、「独立!」と叫んで、8年の追加刑。
	依然として武器はなし、しかし今回は看守に少し怒鳴った。
	
                         (161頁より引用・要約)
                                 ***
	
	 果敢に非暴力で抵抗運動をしかけるガワン・サンドルだが、それに対
	する拷問・仕打ちは凄まじい。
	
	 フランス人記者と人権活動家が、インドに亡命してきた証人から取材
	し、可能な限り事実が明らかにされ、告発しています。
	
                                   ◇
	
	 非暴力・抵抗運動を行っているのは、少女ひとりではない。
	
	 ──2000年12月に出版されたチベット人権センターの報告書に
	よれば、チベットの政治犯は451人で、うち僧侶が256人、尼僧が
	74人である。──(207頁)
	
	 1998年、監獄の広場で行った抵抗運動で、少女は暴力を受けて瀕
	死の状態になった。そして裁判では5年の延刑になり2014年まで出
	獄できない、という。しかも、次回裁判にかけられれば死刑が宣告され
	る、という。
	
                                   ◇
	
	 本書のフランス語版(原書)をパリの書店で手にした訳者・今枝由郎氏
	は、「この尼僧を、彼女の闘争を日本に紹介する使命のようなものを感
	じた」(225頁)。
	
	 本書を刊行させたトランスビューの中嶋廣氏は、ゲラ刷りを読んで、
	「私はあなたのことを心配している」という感慨をもったという。
	
                                   ◇
	
	 本を読み終えて、インターネットで、ガワン・サンドルに関する情報
	を集めました。
	 うれしかったのは、ガワン・サンドルがまだ生存していて、そしてな
	んと釈放されていました。

		ダライ・ラマ法王日本代表部事務所
		http://www.tibethouse.jp/human_rights/nsandol.html
	
	 ひとりでも多く人に、この本を ぜひ 読んで欲しいと思う。

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 最終更新時間:2008年04月24日 16時50分40秒