『出版・書店 これからどうする』 1986年10月25日発行 ぱる出版
 「第1章 書店の現場から」より、126-127頁
新タイプの書店の可能性 お客と一緒に考える会員制の書店
出会い塾&ヒントブックス 山田利行
 ヒントブックスは、会員制の書店である。《出会い塾&ヒントブックス》が、 正式の事業所名でもある。もともとは〈出会い塾〉だけであった。学習塾ではなく、子どものための"遊び塾"であったり、消費者運動や自然保護運動の市民グループの一つであった。
 通常、市民運動といえば、その"組織(集団)"によって力の行使をするのであるが、出会い塾は、「個人に何ができるか」を課題とし、個人の行動を支援する形で事業を展開していた。しかし、この課題は構想であって、具体的事業を思いた っての"創業"ではなかったから、当然ながら、とてもメシの食えるものではなか った。
 出会い塾の一々をここで触れる間がないので省略するが、個人の知的生産に不可欠な〈本〉を取扱い始めたことによって、〈出会い塾&ヒントブックス〉が発展的に出現したことになる。
 ヒントブックスが会員制なのは、出会い塾のメンバーをそのまま引継いでいるからである。ミニコミ誌『出会い塾&ヒントブックスからの通信』を毎月発行しているが、無料配布ではない。年間に3000円の会費を負担していただいている。 会費を負担してでも、会員でありつづけてくれるところに、顧客以上の信頼と相互協力関係が生まれてくるのである。
 「今すぐにでも欲しい」。これがお客の本音である。したがって、たとえ一日でも待ってもらうことは、ガマンを強いているにすぎない。ヒントブックスは零細書店。しかも、今のところ、不本意ながら無店舗である。自分で実物を見て選ぶ楽しみもなく、必ずといってよいほどに、待ってもらわねばならない。
 でも、確実に注文は創業以来ずっと増えつづけている。なぜだろうか。
 店舗がないから、100%外商である。「個人の知的生産」が対象であるから、学校や事業所の出入りはあまりやらず、家庭訪問が主である。電話での応対も多い。 そして、よく話す。お客が何を求めているのか? 必ずしも〈本〉という体裁の商品ではなく、人を紹介したり、ハイキングの約束でもして一緒に自然観察をしたほうが満足してくれるかもしれない。酸化防止剤を使わないニボシを扱っているので、その注文もある。
 つまり、「書店」らしくありすぎると、本の用事だけしかお付合いできないも のが、ヒントブックスの場合は、本を核としながらも、もっともピッタリとした回答がひきだせると期待して相談してくるのである。
 いかにしてより速く本を取寄せるか。その努力はもちろん続けている。会員制ではあるが"開枚的会員制"とでもいいうるように、まだ会員ではない初めてのお客とも、本と本をとりまく周辺の事柄に気を配りながら、お話しし、ヒントブッ クスの特色を宜伝しているのである。
当ページ再掲載時の注釈

 原文は見開き2頁分。
 原文は縦書き。横書きにするために漢数字を一部 算用数字に書き直しました。

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