『読売神戸ライフ』 1994年3月号
読書の世界が広がる 本屋さん
本屋さんでたくさんの本を見るたび、"知の宝庫"だと感心してしまう。昨年、出版された書籍は4万5千点。本があふれる時代だけれど、本当に読みたい本、心に残るものは、どのくらいあるのだろう。いい本と出合えそうな、じっくり本と付き合っている本屋さんを訪ねた。
本誌・稲野喜美子
読者サービスが好評! ヒントブックス
明石市西新町2-1-6-405 電話078-922-7671
 生活のぬくもりが漂うマンションの自宅がオフィス。本屋さんの常識を打ち破る会員制が原則の無店舗書店が、山田利行、輝子さん夫妻のヒントブックスだ。電話やFAXでの本の注文を受け、神戸・明石の一部は配達、遠方へは発送する。絵本から専門書まであらゆる分野を扱い、特に辞典や地図などに強い。
 ここの特色は、新刊やおすすめの本などを紹介した『通信』を発行し、きめ細かいレファレンス・サービスをしていること。一般の書店では、本の有無を調べてもらっても、なかなか突っ込んだ相談はできない。でも、ヒントブックスなら目的がはっきりしていれば、それに合った本を探してくれる。書名がわからない、子供に与えたい本の相談に乗ってくれる。
 「かかりつけのお医者さんがいるように、本のことを相談できる書店員がいるといいですよ」と利行さん。
 ここでは入会の時に「どういう分野の本を読みますか」「あなたの今、一番の関心事は何ですか」をお客さんに聞いて傾向をつかみ、役立つ情報を伝えている。情報があふれる時代に、必要な情報を取り出すのはなかなか難しいから、本好きの会員が増えているのもうなづける。
 会員は180人を超え、会費は年間3600円。読書離れがよく言われるけれど、本代は月に1万円という人はざらで、よく読む人は2、3万円にも。「よい本に出合うには、ある程度予算を持っていないと、面白い本や雑誌があっても目的がせばめられますから」。利行さんの話に、何にお金を使うかはそれぞれの価値観によるけれど、精神的に豊かに生きるため、少しぜいたくしようと思った。
 会員の注文は様ざまで、「干刈あがたの文庫をすべて」とか「出産の祝いに『母の友』(福音館書店)を夫の方に贈って下さい」といった感じ。また、「100冊、本を読んでも手元に残して置きたい本は1、2冊です。よい本、楽しい本と巡り合うことを望みます」と、今の出版状況を象徴するような手紙も届く。
 輝子さんとの本談義も楽しい。たとえば育児書でも「うちは毛利子来、松田道雄さんの本をすすめているんです。子育てだけにとどまらず、社会性があります」。女性問題では、もろさわようこ、樋口恵子、そしてアジアの問題をとりあげている松井やよりらの本を次々にあげて豊富な知識で解説してくれる。"読んで楽しい、視野を広げてくれる"そんな本との出合いが、ヒントブックスにはある。
当ページ再掲載時の注釈

 原文は本誌1頁分。写真は2枚ありましたが、割愛しています。
 原文は縦書き。横書きにするために漢数字を一部 算用数字に書き直しました。

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